高校生の現代文テスト対策 夏目漱石『こころ』本篇②<Kを下宿に呼んでから>

 「K」が養家、実家と義絶し、一年半の間アルバイト(夜学の教師)で学費を稼ぐ生活をつづけたあと、彼が心身の健康を損ねつつあると見た「先生」は、「K」を自分の住んでいる下宿に連れて来て、同居させます。

 この同居には、当初家の主である「奥さん」が反対をし、また「先生」自身、「御嬢さん」を愛しはじめていたにもかかわらず、「先生」は「奥さん」を説き伏せ、「K」には「一所に住んで、一所に向上の路を辿っていきたい」とまで言って、「K」を連れて来たのです。この時、多少は「K」の実家に対する対抗心のようなものがあったにせよ、「K」を助けたい一心、純粋な好意からそうしたことは疑いありません。象徴的な記述があります。

 「・・・私が孤独の感に堪えなかった自分の境遇を顧みると、親友の彼を、同じ孤独の境遇に置くのは、私に取って忍びない事でした。一歩進んで、より孤独な境遇に突き落すのは猶厭でした。・・・」

 そして「先生」は、「奥さん」と「御嬢さん」に、なるべく「K」と話をするように頼みます。そのようにされることで自分の心がほぐれたのと同じ効果を、「K」にももたらそうと考えたためです。

 と、ここまでの通りであれば、「先生」は自分を欺いた叔父と異なり、「自分はまだ確(たしか)」で「正直な路を歩」き通すことができたわけです。しかし実際には人の「こころ」は、思ってもみない境涯に、人を連れて行きます。「先生」は、自分が「奥さん」や「御嬢さん」に「K」と仲良くしてもらいたいと頼んでおきながら、いざ「御嬢さん」と「K」が親しくなり出すと、嫉妬心が湧き上がるのを抑えることができなくなりました。

 このあたりを、教科書で「K」のくだりのみを読む場合でも、押さえてほしいと思います。人のこころというものは変わりやすく、理屈通りには片づかないものです。「先生」は、「御嬢さん」を自分だけのものにしたい(専有したい)と強く思っていながら、自分から「K」を連れて来て、嫉妬心を理由として追い出すこともできず、かと言って、如才なく御嬢さんの気持ちをとらえることもできず、行き悩みます。

 その時の自身の状況を、「先生」は、「きわめて高尚な愛の理論家」であり、「同時にもっとも迂遠な愛の実際家」であったと言います。そのような状況の時に、「K」の口から、「御嬢さん」への苦しい恋の思いを打ち明けられたのです。

 もしも自分が「先生」の立場だったらどうするか、みなさん考えてみて下さい。親友から、自分の好きな人を好きだ、と言われたら・・・。つづきは近日中アップの次回に。

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