松尾芭蕉『おくのほそ道』について-①「漂泊の思ひ」

 間もなく、中学3年生にとっての天王山である2学期の期末テストが行なわれます。国語では、ほとんどの学校で、『おくのほそ道』が範囲になっていることでしょう。中学3年生の教科書では、「月日は百代の過客にして・・・」からはじまる冒頭の「漂泊の思ひ」と、奥州藤原氏と源義経を偲ぶ「平泉」の章が掲載されています。

 「漂泊の思ひ」では、「月日」や「行きかふ年」が「旅人」のようなものであり、「旅に生きる」ことへの芭蕉のあこがれを理解することが、まず肝要です。

 そして、旅に生き、「風雅の道に生涯をささげた」(光村図書版教科書の通釈より)古人たち、すなわち杜甫、李白、西行、宗祇の4人の名前を問うことも、中学校の定期テストではよくあります。4人全員の名を漢字で書かせる場合もあれば、そのうちの1人だけ書けば良い、ということもありますので、学校の先生の指示を、よく聞いておいて下さい。

 「片雲の風にさそはれて」は、教科書(編者)によって解釈が異なります。光村版では「ちぎれ雲のように風に誘われて」となっていますが、一昨年までの東京書籍版(手元に現存)や、昔から多くなされている解釈では、「ちぎれ雲が風に誘われて漂うように」などとなっています。先生によっては、光村版の教科書でも、後者の解釈に拠ることがあるかも知れません。学校の授業で、特に注意して確認して下さい。

 そして、試験によく出るポイントは、白河の関を越え、松島の月を見たいと、みちのくにあこがれる芭蕉が、心そぞろに旅の支度をする部分です。すなわち、「股引(ももひき)の破れをつづり」、「笠の緒付けかへて」、「三里に灸すうる(すゆる)」の、三つの行動のことです。これを書き抜きさせる問題が、よく出されます。
 またこの部分では、「住めるかたは人に譲り(て)」、「杉風が別墅に移る」までを含めて、五つの行動とされるケースもあります。ここも「要注意」です。

 この章の最後には、「草の戸も住み替はる代ぞ雛の家」の句がありますが、これも近年目にする教科書、問題集等では、「自分が住んでいた隅田川のほとりの草庵も、新しい住人が越して来て、自分がいたころのわびしさと対照的に、はなやかな雛人形などを飾っている」と、すでに新しい住人が住んでいるという解釈にされているものが多いです。かつてはそのように「なるだろう」という解釈が多く見られました。この点まで教科書の通釈をはなれて別の解釈をする先生はあまりいないかと思いますが、一応、ここも注意して下さい。

 順序は前後しましたが、冒頭から二文目の「対句」も、重要なポイントです。

「舟の上に生涯を浮かべ」、
「馬の口とらへて老いを迎ふ」 る者

と、船頭と馬子の叙述が、いずれも「者」にかかって、それぞれを表しているのです。

 試験に出そうな重要ポイントは、以上のようなところです。あとは、最低でも「古人も多く旅に死せるあり。」まで、あるいは全文を暗誦できるようにして、かつ通釈を何度も読んでみて下さい。

 これで期末テストの『おくのほそ道』(漂泊の思ひ)は、相当よい結果となるはずです。「平泉」については近日中に、アップ致します。

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